「親中反日」は韓国でも危ぶまれ始めた;日経ビジネスからシェア

投稿日: 2013年9月13日 | 投稿者: ★ちょろQコレクション★

米国も見透かす韓国の「卑日一人芝居」

「親中反日」は韓国でも危ぶまれ始めた

 朴槿恵政権の外交を「親中反日」と厳しく批判し「海洋勢力側への回帰」を訴える人々が韓国に登場した。「反日は心地良いが、必ず『離米』につながる。それは国を滅ぼす」と彼らは主張する。

中国には短刀を呑んでかかれ

 中心人物は趙甲済氏である。日本の「文藝春秋」に相当する「月刊朝鮮」の編集長を永らく務めた、韓国保守の理論的指導者の1人だ。在野の保守団体「国民運動本部」を創設し、1945年生まれながら、時に街頭闘争に繰り出す活動家でもある。

 同氏は「趙甲済ドット・コム」代表としてネット・メディアを主宰(注1)。そこで自身の主張を展開すると同時に、若手記者や保守のオピニオン・リーダーに発信の場を提供している。

(注1)サイト(韓国語)はここ

 趙甲済氏が8月23日に掲載した「中国に対しては短刀を呑んでかかれ」という長い記事のハイライト部分は以下だ。

  • 「韓―米」同盟は「韓―米―日」同盟構造の一部である。韓日関係が悪化すれば、きちんと機能しない。朝鮮半島で戦争が起きた際、日本は韓米同盟軍の後方基地の役割を果たすのだ。朴槿恵政権の親中反日路線はいずれ限界に突き当たるほかはない(「親中反日路線の危険性」の項)。

 「趙甲済ドット・コム」の金泌材記者も「韓国の反日、日本の嫌韓を超えて――韓日が“過去”に束縛されれば、中国共産党と北朝鮮という“現実”問題を見失う」を8月27日に載せた。要旨は以下の通りだ。

台湾なら守るが、韓国は嫌だ

  • 米国は日本の右傾化に反対しない。東北アジアで自分ができないこと、つまり中国牽制を日本にしてもらうためだ。
  • 朴槿恵大統領は中国を通じ日本を牽制する方針だ。これは戦略的な“判断ミス”であり、“外交失策”につながる可能性が高い。東北アジアでの韓国の立場を弱める結果を生みかねない。

 韓国の保守メディアがここまではっきりと、保守政権の外交政策の基本方針を批判するのは珍しい。彼らの危機感――日韓関係の極度の悪化が米韓同盟の機能不全、つまりは「米韓の離間」につながる恐怖――が良く分かる。

実際、「日本の右傾化批判」など執拗な「韓国の反日・卑日」が「日本の嫌韓」を呼んだ今、日本人は韓国の安全保障上の危機に極めて冷淡になった。

 朝鮮半島有事の際、日本は北朝鮮からの攻撃というリスクを甘受しつつ、在日米軍の韓国支援を認めるのか、怪しくなってきた。

 今、日本で論議される集団的自衛権の行使に対しても「嫌韓」がブレーキをかける。行使の容認に踏み切れば、日本が「第2次朝鮮戦争」に巻き込まれる可能性がさらに増すからだ。

 「行使」派の間でも「日本の友好国であるベトナムやフィリピン、台湾を守る米軍と、自衛隊が共に戦うことは必要だ。だが、中国のお先棒を担ぎ、反日・卑日にあけくれる韓国のために日本人が血を流すなんてとんでもない」との意見が急速に増える。

五輪も自衛権も、とにかく反対

 一方、韓国。政府は現時点では日本の集団的自衛権に関し態度を明らかにしていない。「行使」はそもそも、米国が日本に求めたことと知ってはいる。だが、中国が強く反対している。すでに対日政策で韓国は中国の意向に反して動けない。

 メディアは反対一色だ。韓国社会で「反日」は宗教と化している。東京への五輪誘致だろうが、集団的自衛権だろうが、とにかく日本のすることに反対しておけば商売になる。もちろん、中国からの圧力もあるのだろう。

 こうした空気の中で、趙甲済氏は「日本の集団的自衛権の行使は韓国に有利なことだ!」(8月28日)という記事を書いて「行使」に賛成するよう、韓国人に訴えた(注2)。

(注2)この記事は「西岡力ドット・コム」で日本語でも読める。

 韓国の伝統的な保守は、日米共闘体制が完全に機能してこそ韓国の安全が増す、と考える。この記事からは「せっかく到来したチャンスをつかみ損ねてはいけない」という彼らの思いが読みとれる。

北が核配備するなら戦争だ

 韓国保守にとって「チャンスをつかみ損ねた」失敗の前例がある。2012年、「日韓軍事協定」の署名を、調印の当日になって李明博政権が拒否したことだ(『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』第1章第3節参照)。

 与党の最有力指導者で中国に極めて近い朴槿恵氏の意向が働いた、と当時、韓国紙は報じた。金泌材記者らは今も「安全保障に大きく寄与するはずだった、貴重な宝を自ら捨てた」と悔しがる。

では、なぜ今になって韓国の保守が「反日」政策に警鐘を鳴らし始めたのか――。

 それは北朝鮮の核開発がどんどん進み、戦争の可能性が増すとの懸念からだ(注3)。韓国にとって、緊張が高まるほどに「後方基地」たる日本の重要性は増す。

(注3)北朝鮮の核・ミサイル開発の最近の動向に関しては『北朝鮮はどんなふうに崩壊するのか 』(惠谷治著、小学館101新書)が詳しい。

 趙甲済氏は「中国に対しては短刀を呑んでかかれ」で、韓国の置かれた危うい状況を以下のように記している(「核ミサイルの実戦配備」の項)。

発射7分後にソウルを直撃

  • 北朝鮮が核弾頭を小型化し、すでに保有しているミサイルに搭載してソウルに向けて撃てば7分間で到達する。
  • これを防ぐ手段はない。首都圏には人口の半分、経済力の70%が集中する。韓国は壊滅する。
  • 核攻撃の後、北朝鮮は米国に対し「もし我が国に対し報復攻撃すれば、我が方は米国、日本に対し核ミサイルを撃つ」と脅すだろう。米国がそれでも敢えて対北報復を実行するかは分からない。
  • となれば、北朝鮮が核弾頭を実戦配備するだけで韓国は人質となり、北朝鮮の言われるままになるしかなくなる。
  • 人質化を避けるために、韓国はミサイル・核開発施設や核技術者を無力化する「北朝鮮崩壊作戦」を検討せざるを得ない。
  • 全面戦争を覚悟して敵の核ミサイル配備を阻止するか、あるいは自衛的核武装に着手しなければならない。

 2012年2月の3回目の核実験に端を発した北朝鮮の一連の核威嚇。一時は世界中から戦争記者がソウルに集まるほど注目されたが、騒ぎが終わるとすっかり忘れ去られた。だが、韓国にとっては依然、北の核はチクタクと時を刻む時限爆弾である。

「自前の核」が一番有効

 日本の保守とは大きく異なり、韓国のそれは「反中」では決してなく「親中」でさえあった。主要敵は北朝鮮であるうえ、北の暴発を防ぐためにも中国との良好な関係が必要とされたためだ。

 だが今、趙甲済氏らは「反日をやめよう」との主張に留まらず「親中政策」まで批判するに到った。なぜだろうか――。

それは核ミサイルの実戦配備を進める北朝鮮を、中国が依然としてかばい続けているからだ。6月末の中韓首脳会談で習近平主席は「北の非核化」という言葉を一切、使わなかった。

 さらには「朝鮮半島の非核化」を朴槿恵大統領に約束させた。これを韓国の保守は「おまえこそ核開発してはいかんぞ」と中国に言い渡された、と受け止めた(「『中国傾斜』が怖くなり始めた韓国」参照)。

 韓国では66%の人が核武装に賛成である。趙甲済氏が前記の記事で主張するように、北の核に対抗するには「自前の核保有」が一番確実だからだ。

 首脳会談の前、中国は「あなたが私にもっと近寄れば、北朝鮮よりも大事にする」と韓国にささやき続けた。韓国人は大喜びして朴槿恵大統領を北京に送り出した。

中国に騙された朴槿恵

 それだけにこの“冷遇”はよほどショックだったに違いない。ことに安全保障を重視する保守の一部は、これを機に中国への不信と警戒を一気に強め、米国が率いる海洋勢力側に戻る決心を固めたのだ。

 「中国に対しては短刀を呑んでかかれ」という見出しも、彼らの決意のほどを示している。趙甲済氏はこの記事の前文と「中国が東北アジアの覇権を追求する時」の項で、以下のように主張した。

  • 中国に騙されて“自衛的核武装”カードを捨ててはいけない。
  • 韓国が米日のミサイル防衛(MD)網に加わることは、中国の核ミサイルを無力化する短刀だ。
  • 中国は東北アジアの覇権国家を目指すだろう。そのためには「韓―米―日」同盟を壊す必要がある。
  • 中国は朝鮮半島の統一の過程で、米韓同盟を弱体化、あるいは解体させようとするだろう。
  • 一部の韓国人の気質には中国に対する事大主義の根性が残っている。彼らは韓米同盟を解体し、中立化しようと言い出すだろう。

 これほどはっきりと「反中親米」を露わにしたうえ、その一環として日本との関係改善を訴える記事はほかに見当たらない。韓国のメディアは依然として「反日」記事で埋め尽くされている。

オバマ大統領への説教

 例えば、中央日報のイ・ハギョン論説室長が書いた「日本は韓国が一番よく知っている」(9月4日)がその典型だ(注4)。要旨は以下の通り。

(注4)この記事はここで、日本語でも読める。

  • 集団的自衛権を確保しようとする日本の動きが尋常ではない。これにより、日本は領土への攻撃を受けなくとも自衛隊の朝鮮半島進出が可能になる。
  • 日本の再武装に対し米国が寛大なのは、中国牽制には日本の力を借りる必要があるからだ。実際、金融危機への予防面でもアジア各国を対象に日米は共同で動く。これも中国牽制の一環だ。
  • 米国に問いたい。真珠湾攻撃を忘れたのか、と。軍国主義日本が米国を相手に戦うと予想したのは、当時、独立運動家だった李承晩だ。彼はルーズベルト大統領夫妻と米国務長官に警告したが、無視された。
  • 日本の再武装化に対する韓国と中国の不満に米国は耳を傾ける必要がある。日本に翼を与えて韓国を不安にしたり、中国を仲間外れにすることが米国の利益に合致するのか、冷静に考えるべきだ。オバマ大統領がルーズベルト大統領の愚を繰り返さないことを望む。

米中を後ろ盾に日本封じ込め

 「日米が連携して中国を封じ込めようとしている」との現実認識は趙甲済氏や金泌材記者と変わりがない。それなのに対日政策に関する主張が180度反対方向を向くのは、同盟に関する姿勢が完全に異なるからだ。

 イ・ハギョン論説室長は、韓国政府の外交方針である「韓米中協商」に忠実だ。これからすれば、韓米関係を生かして日本を封じ込めて見せ、中国の歓心を買うことが正着だ。

 一方、趙甲済氏らは「米中双方と結ぶなんてことは幻想であり、海洋勢力側に戻ることが生き残りの道」と考える。当然、日本との関係修復が必要になる。

 朴槿恵政権の「韓米中協商」――米中間を上手に泳ぎ渡る手法――は以下のような構造と見られる。

(1)米国との関係は維持しつつ、中国の懐に飛び込む。
(2)米中両大国を後ろ盾に、北朝鮮と日本を封じ込める。
(3)「日本の右傾化」や「戦犯国としての反省のなさ」を世界で言い募る。

 実は、(3)がミソなのだ。以下の効果により、(1)と(2)を下支えするからだ。

コウモリ外交は可能か

  • 国際社会での日本の“格”を落とし、代わりに韓国がその位置を占める。米国は韓国を粗略に扱いにくくなる。
  • 日韓軍事協定締結など中国包囲網に加わるよう米国から求められたら「そうしたいのは山々ですが、日本の右傾化のために国内に反対が多く、不可能です」と弁解し、「従中」を米国に悟られないようにする。
  • 米国は中国の対日封じ込めにはなかなか応じない。そこで中国に代わって、韓国が米国に日本批判を吹き込む。中国のお先棒を担ぐことで、韓国の存在意義を中国に示せる。

 朴槿恵大統領が米国へ行こうが、中国へ行こうが、ロシアでドイツ首相に会おうが、必ず声高に日本を批判するのは、韓国外交にとって(3)が必須と認識されているからだろう。

 でも、米中間でコウモリのように振る舞う外交が永続きするものだろうか――。韓国がよほど重要な国と認められない限り、両大国は韓国の思い通りに動いてくれないだろう。

 早い話、コウモリだと見破られたら終わりだ。中国は「米韓同盟を続けたまま、北朝鮮よりも大事にしろとはずうずうしい奴だ」と考えて、韓国に対し「我が国と同盟を結んだらどうだ」と言い出したのだ(「『同盟を結べ』と韓国に踏み絵を迫る中国」参照)。

典型的な従属国

 米国だって、韓国の二股外交が気になってくれば「日本が悪いなどと下手な言い訳は止めて、MDに参加するなり同盟に誠意を見せろ」と怒り始めるだろう(「『独裁者の娘』を迎える米国の険しい目」参照)。

 金泌材記者も書いている。「米国や日本の知識人たちは韓国が海洋勢力側から大陸勢力側に移る過程にあると見ている」。そうなのだ。韓国人の前で露骨に言う人はあまりいないだろうが、目端がきくアジア専門家の間ではもう、それが常識だ。

 筆者が初めて、公開の席での議論として聞いたのは2008年1月にバンコクで開かれたイースト・ウエスト・センター(ハワイ)のシンポジウムだった。

 「台頭する中国にアジアのどの国が対抗するか」という話題で盛り上がった際、各国のアジア専門家の間でほぼ一致したのが「他の国がどうであれ、韓国は中国側に真っ先に行く」だった。

2012年11月に米・戦略国際問題研究所のエドワード・ルトワック(Edward N. Luttwak)上級アドバイザーが出版した「THE RISE OF CHINA VS. THE LOGIC OF STRATEGY」(注5)は「韓国の対中従属のDNA」や「動機不純な反日・卑日」をしっかりと指摘している。

(注5)日本語版は『自滅する中国』(奥山真司監訳、2013年)。なお、この記事で引用した部分は日本語版を参考にした。

 ルトワック氏は第16章「韓国――天下システムにおける典型的な従属国?」で以下のように書いた。

卑日で現実逃避する韓国

  • 韓国は米国には北朝鮮による全面戦争への抑止力を、中国には一時的な攻撃に対する抑止力を依存している。だがこれは、米国にとって満足できる状況ではない。韓国を守るリスクとコストを独力で負わなければならない半面、韓国への影響力は中国と折半せねばならぬからだ。
  • 韓国の安全保障面での責任逃れの姿勢は「日本との争いを欲する熱意」という歪んだ形で現れる。韓国沿岸での中国漁船による不法操業が拡がり、同胞(海洋警察官)が殺されようと、韓国はいつもの、まったく無害の標的に怒り続けている。「従軍慰安婦」を示す、上品ぶった韓国人少女の像がソウルの日本大使館の前に設置された。
  • こうした現実逃避は国際政治に携わる実務家の力や同盟国としての影響力を損なう。さらに、実際に脅威をもたらしている国に威嚇されやすくなってしまうのだ。

 韓国が1人で演じている反日・卑日劇を、米国も日本もあきれながら眺めている。趙甲済氏らはこれを見てとって「芝居は長続きしないぞ」と警告し始めたのだろう。だが、朴槿恵政権が舞台から降りるかは分からない。

一人芝居に拍手してみせる中国

 下手な一人芝居に拍手して、おだてあげる国もあるからだ。韓国の外相から国連事務総長に転じた潘基文氏は8月26日、ソウルで日本の憲法改正への動きを牽制する発言を韓国語で行った。

 日本の政府やメディアが「内政干渉」と批判すると本人は弁解したが、中国の外交部はすかさず潘基文氏の支持に回った。

 朝鮮日報(日本語版、8月29日)は一連の動きを報じた「盗人猛々しい日本メディア、国連総長を猛非難」という記事に「中国は発言を支持」とのサブタイトルを入れた。

 「反日・卑日」をやって中国に頭をなぜてもらった時の韓国人は、本当にうれしそうだ。だから、趙甲済氏らがいくら「周囲には見切られているぞ」と指摘しても、韓国が変わるかは分からない。

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