吉田調書 抄録1~5まで 産経新聞から

投稿日: 2014年8月23日 | 投稿者: ★ちょろQコレクション★

福島第1事故「吉田調書」

ヒーローが一転「逃げ出す作業員」「恥ずべき物語」に 朝日報道、各国で引用

 外国の有力メディアは、「吉田調書」に関する朝日新聞の記事を引用し、相次いで報道した。韓国のセウォル号事故と同一視する報道もあり、「有事に逃げ出した作業員」という印象が植え付けられている。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(いずれも電子版)は5月20日、「パニックになった作業員が福島第1原発から逃げ出した」と報じた。「朝日新聞によると」という形で、記事では第1原発所員の第2原発への退避を「命令違反」だと報じている。

 英紙ガーディアンは5月21日付で「『フクシマ・フィフティーズ(福島の50人)』と呼ばれたわずかな“戦闘員”が原発に残り、ヒーローとして称えられた。しかし、朝日新聞が明らかにしたように650人が別の原発に逃げたのだ」と記した。

 オーストラリアの有力紙オーストラリアンも「福島のヒーローは、実は怖くて逃げた」と見出しにした上で、「事故に対して自らを犠牲にし果敢に闘った『フクシマ・フィフティーズ』として有名になったが、全く異なる恥ずべき物語が明らかになった」と報じた。

 韓国紙・国民日報は「現場責任者の命令を破って脱出したという主張が提起されて、日本版の“セウォル号事件”として注目されている」と報道。韓国で4月に起きた旅客船沈没事故で、船長が真っ先に逃げたことと同一視している。

吉田調書 抄録1~5

海水注入、事故直後から指示 現場判断「停止なんて毛頭考えていなかった」

 東京電力福島第1原発事故で、当時の吉田昌郎所長が、事故直後の早い段階から原子炉を冷やすために海水注入を指示していたことが、政府の事故調査・検証委員会の聴取に答えた「吉田調書」で分かった。海水注入の検討の際には、現場と東電本店(東京都千代田区)など外部とつないでいたテレビ会議の音声を遮断していたことも判明。海水注入は塩分が炉を傷め、廃炉につながるため躊躇(ちゅうちょ)していたと批判されたが、現場では廃炉を前提に注水を検討していた。

 国会事故調査報告書など公表資料によると、海水注入の指示は、平成23年3月12日午後2時54分とされている。その1分前には注水していた淡水が枯渇した。

 吉田調書によると、吉田氏は「指示はもっと早い時点にしている」と強調。時間は明確ではないが「冷やすのに無限大にあるのは海水しかないから、もう入れるしかなかった」とし、12日午前中の淡水注入の段階から検討していたという。

 さらに吉田氏は海水注入を東電本店と相談しなかったことにも言及。「別にいちいち言う必要はない」として、テレビ会議の音声を遮断していたという。

 テレビ会議の公開映像によると、吉田氏が1号機への海水注入の翌日となる3月13日、2号機の原子炉を冷却するための海水注入の準備を報告。その際、東電本店の社員が「いかにももったいないなという感じがする」と話し、塩分で腐食し廃炉になることを本店側が恐れた場面がある。

 しかし吉田氏は聴取の中で機器への損傷を問われると「燃料が損傷している段階でこの炉はもうだめだと。再使用なんて一切考えていなかった」と廃炉が前提だったと証言している。

 海水注入をめぐっては12日夜、首相官邸側からの中止要請を無視し、吉田氏が運転員に中止しないよう耳打ちし注入継続を指示していたことが明らかになっている。このことについて吉田氏は「注水を停止するなんて毛頭考えていなかった。いつ再開できるか担保のないような指示には従えないので私の判断でやる」と述べた。(「吉田調書」取材班)

海水注入「テレビ会議、音声切った」「うるさい、黙っていろ、と」

 東京電力福島第1原発事故で、所長として現場の指揮を執った吉田昌郎氏の聞き取り調査をまとめた「吉田調書」。2回目は、原発への海水注入に関する吉田氏の証言をまとめた。

 〈全交流電源を喪失した福島第1原発では、東日本大震災翌日の平成23年3月12日午後、炉心の状態が分からなくなってきた〉

 --水位計がおかしかったと

 吉田氏「間違いなくおかしかった。そこを信用し過ぎていたという所については大反省です」

 --水位計が信用できないと思い始めたのはいつか

 吉田氏「水位計そのものよりも放射線量が上がっているのがおかしいと。普通に冷却が効いていれば、水位はあって線量が上がることはないわけですね。想像からすると、燃料損傷に至る可能性はあるなと」

 〈燃料を冷やす淡水が尽き始める。通常は水につかっている燃料が露出すれば炉心溶融(メルトダウン)に至り、放射性物質が拡散する。現場では、苦肉の策として海水を投入する準備が始められた〉

 --最初の海水注入の指示は3月12日午後2時54分か

 吉田氏「書いてあるものとしては最初になるが、この日の午後から海水注入をする準備をしておきなさいということは言っております。3号機の逆洗弁ピット(くぼ地)に津波の時の海水が残っている。かなりの量があるというのを聞いて、そこから取るしかない。注水しようと最終決定したのが午後2時54分で、もともとの検討はその前にやっている」

 --海水注入はテレビ会議を通じて東電本店の人と話し合ったのか

 吉田氏「誰かに聞いたと言うより、淡水をいつまでやっていても間に合わない。だから海水を入れるしかないと腹を決めていましたので、会議で言ったかどうかは別にして消防班に海水を入れるにはどうすればいいのかと検討させた」

 --本店は把握していたのか

 吉田氏「細かい状況については報告していなかったですね。(テレビ会議の)音声切っていますよ」

 --切れるんですか

 吉田氏「切れる。図面を持ってきて、ポンプ何台か、消防車何台あるんだと検討している。それなら別にいちいち言う必要はないわけで。本店に言ったって、逆洗弁ピットに海水がたまっているなんていう情報は100万年経ったって出てきませんから、現場で探すしかないわけですね」

 --炉の中に海水を入れる経験は聞いたことがあったか

 吉田氏「世界中でそんなことをしたことは1回もありません。ないけれども、淡水が有限で、冷やすのに無限大にあるのは海水しかないですから、もう入れるしかない」

 --海水を入れると機器が全部使えなくなるからお金がかかるとは思わなかったか

 吉田氏「全くなかったです。もう燃料が損傷している段階でこの炉はもうだめだと。再使用なんて一切考えていなかったですね」

 〈12日午後3時半に海水注入の準備が完了したが、その6分後、1号機が水素爆発したため中断。再び準備が整ったため、午後7時4分に海水注入を開始した〉

--海水注入開始はこの時間でいいのか

 吉田氏「いろいろと取り沙汰されているが、注入した直後に官邸にいる武黒(一郎・東京電力フェロー)から電話がありまして、官邸では海水注入は了解していないと。だから海水注入は停止しろという指示でした。本店と話をして、やむを得ないというような判断で止めるかと。うちはそんなことは全く思っていなくて試験注入の開始という位置づけです」

 「ただ私はこの時点で注水を停止するなんて毛頭考えていませんでしたから、いつ再開できるか担保のないような指示には従えないので私の判断でやると。担当している防災班長には、中止命令はするけれども、絶対に中止してはだめだという指示をして、それで本店には中止したという報告をしたということです」

 --海水注入は所長に与えられた権限と考えるのか

 吉田氏「マニュアルもありませんから、極端なことを言えば、私の勘といったらおかしいんですけれども、判断でやる話だと考えておりました」

 --それを止めろというのは雑音だと考えるのか。本店との話し合いは

 吉田氏「何だかんだいうのは、全部雑音です。本店の問い合わせが多いんです。サポートではないんですよ。途中で頭にきて、うるさい、黙っていろと、何回も言った覚えがあります」(肩書は当時)

津波襲来、全電源喪失「はっきり言って、まいった」「絶望していた」

 東京電力福島第1原発事故で、所長として現場の指揮を執った吉田昌郎氏の聞き取り調査をまとめた「吉田調書」。3回目は、原発に津波が襲来した時の吉田氏の証言をまとめた。

 〈東日本大震災が発生した平成23年3月11日、運転中の1~3号機が緊急停止した。地震の約50分後、約15メートルの津波が襲い、全交流電源喪失状態に陥った〉

 吉田氏「これははっきり言って、まいってしまっていたんですね。もう大変なことになったと」

 --大変さの程度だが、具体的にどういうことをされたのか

 吉田氏「具体的な運転操作は、運転員の方がプロだから任せているんです。箸の上げ下ろしでこうやれ、ああやれということではない。対外的な連絡だとか、状況把握をするということがメーンだったと思います。地震があってみんな気持ちがこうなっている(動揺している)んで、落ち着いてやれとそれは言いました。余震があるかもしれないから、その注意はちゃんとしておけと」

 --非常用電源が使えないことで、次にどういう対応を取ろうと考えたのか

 吉田氏「絶望していました。全部の炉心冷却が止まって、バッテリーが止まった後、どうやって冷却するのかというのは自分で考えても、これというのがないんですね」

--緊急対策本部の雰囲気はどうだったか

 吉田氏「どちらかというと、みんな愕然(がくぜん)という感じで声が上がらないんですね。少なくとも技術屋の中では、大変なことになったという共通認識があったと思います」

 〈地震で外部電源は断たれたものの、原発の設備や機器に重要な損傷はあったのか、事故後大きな争点となった〉

 --津波が来るまでの50分間にどれだけ分かったのか知りたい

 吉田氏「スクラム(原発の自動停止)した後、いろんなパラメーター(数値)がとりあえず異常ないかと。各中央制御室に確認しています」

 --例えば、配管から水漏れが生じているとか、何か白煙が上がっているとか、平時と異なる事象がプラント内で生じているという情報は津波の前の段階であったのか

 吉田氏「基本的にはなかった。水漏れとか機器の損傷とか、私は全く聞いておりません」

 --地震後津波までに、人の生命、身体の安否の確認は

 吉田氏「グループ異常なしとか、全員いましたとかいう報告が随時上がってきています。プラント(原発)を運転している人たちは逃げられないから、各中央制御室で人員を把握して報告するというのが次々と入ってきました」

 --主要な機器を扱っている人は逃げてはいけないのか

 吉田氏「運転員は基本的には中央制御室から離れてはいけない。建物が壊れてもというのは極端な話なんですけれども、基本的には」

非常用電源が動き安心

 --運転している原子炉について、冷温停止に向けて危機感はあったか

 吉田氏「すごく強く持っていました。非常用電源が動いたので、ほっとしたんですね。こんな大津波が来るとは思っていないんですけれども、当然地震によって津波が来る可能性はある。海水系ポンプが引き波で使えなくなるのが怖いんですけれども、とりあえずプラントは一定の安全は保たれているという安心感はあったんですが」

 --津波が来るということに対して、かなり時間的に切迫していると思うが、何か対策として講じたことは

 吉田氏「津波の対応というのは結局、事前に手が打てるかというと、この時間で手を打てるものが全くない。津波が来ることを想定して、これから操作をしないといけないぞということだけです」

1号機爆発「短時間のドンという振動」「どう生かすかが一番重要だ」

 東京電力福島第1原発事故で、所長として現場の指揮を執った吉田昌郎氏の聞き取り調査をまとめた「吉田調書」。4回目は、1号機が爆発したときの吉田氏の証言をまとめた。

想定していなかった

 〈1号機は平成23年3月12日午後3時36分、水素爆発を起こし、原子炉建屋上部が大きく損壊した〉

 --どのように爆発を把握したのか

 吉田氏「爆発については全然想定していなかった。免震重要棟にいたが、1号機は全然見えないんですね。線量が高いから外に出られないような状態で、誰も外に行って見ていない。その時に下から突き上げるような、非常に短時間のドンという振動がありましたから、また地震だという認識でおりました」

 「現場から帰ってきた人間から情報が入ってきて、原子炉建屋の一番上が柱だけになっているという情報が入ってきて、何だそれはと。その後、けがした人間も帰ってきて。最初は原因が分からないという状況でやっていました」

 --爆発する前、炉心の状態はどのようなものだったか

 吉田氏「格納容器の圧力が上がっていたわけだから、ベント(排気)しようということで操作したわけですよ。バルブを開けても圧力

--水素が発生しているという認識は持っていたのか

 吉田氏「持っていました。ただし、格納容器の中にとどまっているので、まずは容器の圧力を下げないといけない。加圧している原因が水素であり、これをベントで逃してやらないと」

 --周辺では放射線量が相当上昇して、格納容器の中からどんどん漏洩(ろうえい)したという可能性が高かったのか

 吉田氏「高いですね」

今思えばアホだけど

 --水素爆発が意外だったというのは何か変ではないか

 吉田氏「格納容器の爆発をすごく気にしていたわけです。今から思えばアホなんですけど、水素が建屋にたまるという思いがいたっていない。今回の大反省だと思っているけれども、思い込みがあって、あそこが爆発すると思っていなかった。所長としては何とも言えないですけれども」

 --徹底的に考えないと

 吉田氏「今回のものを設計にどう生かすかという所が一番重要だと思っている。これからこの国が原子力を続けられるかどうか知りませんけれども、続けられるとすればそうですね」

 --爆発で損傷状況はどうなのか

 吉田氏「作業をしていた人間が上がってきて、破片やがれきなどいろんなものが飛び散ってきていますと。電源車が使えなくなったという話もきて、消防車も注水が一時できないような状態になっている」

 --作業員はいったん退避させているという状態か

 吉田氏「まずは安否確認です。とりあえず死んだ人がいないということでほっとしたが、一番近くにいたうちの保全担当が爆風で腕を折って帰ってきたんですね。そいつにどうなっているんだという話を聞いたら、もう大変ですよという話が入ってきた」

 「次のステップとして一番怖いのは格納容器が爆発するんじゃないかということになるが、データを見ていると容器の圧力は爆発前後で大きく変わっていないわけです。格納容器は健全だったということなので、要するに可燃源はもうなくなっている可能性が高いと判断して、水を入れに行かないとどうしようもないので、人をどうするかという判断が一番悩ましかった」

 --電源車も使えない状態だったのか

 吉田氏「新たな電源車をよそから注文して。これから先、山ほどいるでしょうから、手当たり次第送ってこいと注文はずっとしていた」

バランスでベントできない。もう1つは注水。この2本に絞って作業を傾注していた」

ベント躊躇せず「大臣命令で開くもんじゃない」

 東京電力福島第1原発事故で、当時の吉田昌郎所長への聞き取り調査をまとめた「吉田調書」。5回目は、原子炉格納容器の圧力を下げるベント(排気)に関する証言をまとめた。

一番遠いのは官邸

 〈平成23年3月11日の東日本大震災の津波の影響で冷却機能を喪失した第1原発。格納容器の圧力が最初に高まったのが1号機で、早い段階からベントに着手していた〉

 --12日に日付が変わる頃に、1号機のドライウェル(格納容器上部)圧力が600キロパスカルということで、格納容器内の方に圧力容器から放射能が漏れているんではないかという懸念が考えられた

 吉田氏「600キロパスカルだとすると、漏れているとしか考えられない」

 --そういう認識に至り、その次の対応として格納容器ベントを実施する可能性があることから準備を進めるよう指示しているが、(圧力抑制室の水を通す)ウエットウェルベントということか

 吉田氏「この時点では手順に従ってということなので、まずウエットウェルベントをして、それで下がらなかったら、最後は(水を通さない)ドライウェルベントをしなければいけない。こういうことを全部指示している」

--手順書では中央操作室のスイッチで弁が開けるが、今回はそれができない

 吉田氏「AO(空気駆動)弁のエアがない。もちろんMO(電動駆動)弁は駄目だと。手動でどうなんだというと、線量が高いから入れないというような状況が入ってきて、そんなに大変なのかという認識がやっとでき上がる。その辺が、また本店なり、東京に連絡しても伝わらない」

 --すごい階層がある

 吉田氏「一番遠いのは官邸ですね。大臣命令が出ればすぐに開くと思っているわけですから。そんなもんじゃない」

 --午前6時50分に(海江田万里)経済産業相が法令に基づくベントの実施命令を出した経緯は知っているか

 吉田氏「知りませんけれども、こちらでは頭に来て、こんなにはできないと言っているのに、何を言っているんだと。実施命令出してできるんだったらやってみろと。極端なことを言うと、そういう精神状態になっていますから。現場では何をやってもできない状態なのに、ぐずぐずしているということで東京電力に対する怒りがこの実施命令になったかどうかは知りませんけれども、それは本店と官邸の話ですから、私は知りませんということしかないんです」

被曝覚悟で手動、腹を決める

 〈午前7時11分、ベント遅れにいらだつ菅直人首相が陸上自衛隊ヘリコプターで第1原発に到着。吉田氏らから説明を受けた後、午前8時4分には宮城県に向け飛び立った〉

 --菅首相が第1原発に来て帰っていく上空をベントで(放射性物質を含む気体を)どんどん吹かしていくのはどうなのかということから、操作を遅らせたという判断は

 吉田氏「全くないですね。早くできるものはかけてしまってもいいんじゃないですかくらいですから。総理大臣が飛んでいようが、何しようが、炉の安全を考えれば早くしたいというのが現場です」

 --機材とか十分準備できていないし、線量も高いし、できるか分からないが作業を余儀なくされた

 吉田氏「被曝(ひばく)しますけれども、最後は手動でやるしかないというふうに腹を決めて、午前9時に(現場へ)やってくれとお願いした」

 --何かやろうと思っても何もできない状態なのに、下げろと言うんだったら、お前らやってみろと言うしかない

 吉田氏「現場はできる限りのことをやって、後がスムーズに行くようにと思っているんですけれども、なかなかそれが通じない。躊躇(ちゅうちょ)していると思われているんです。何も躊躇などはしていないですよ」(肩書は当時)

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