コンクリートから土へ!巨大3Dプリンターの意外な理念

投稿日: 2017年5月20日 | 投稿者: ★ちょろQコレクション★

イタリアの3Dプリンターメーカー、WASP社は2015年9月、実物の建物を作れる巨大3Dプリンター「ビッグ・デルタ」を完成させた。高さは12mと世界最大級だ。同社はこの3Dプリンター開発の目的は、現地で入手できる材料を使って低所得者層に低コストの住宅を大量供給するためだ。つまり、究極の目標は「地球を救う」ということなのだ。

 イタリアのWASP社は、昨年9月に開催したイベントで、世界最大の巨大3Dプリンター「ビッグ・デルタ(BigDelta)」をお披露目した。

本体となる六角形の立体トラスは、高さ12mで3本の柱で支えられている。

WASP社が開発した世界最大の巨大3Dプリンター「ビッグ・デルタ」(写真:WASP)

内部には3本の伸縮式アームで支えられたコンクリートバケットのように巨大な造形ヘッドが取り付けられている。

この造形ヘッドから、固練りコンクリートのような材料を建物の壁に沿って一定の厚さで積み上げながら、型枠なしで壁を作っていけるのだ。

3本のアームで支えられた造形ヘッド(写真:WASP)

使用電源は1kW~1.5kWと意外に小さい。その理由は電源がない場所でも、1枚のソーラーパネルを使って動かせるようにすることを狙ったからだ。

実物の建物も造形、目指すは「ゼロキロメートルハウス」

同社では3年をかけて、ビッグ・デルタの研究開発を行ってきた。その開発資金は、同社が販売する小型3Dプリンターの収益から拠出してきた。

そして現在は、実物の建物を、この巨大3Dプリンターで建設することに注力している。建物の建設地点で産出される材料を使って、物流(建材の運搬)による環境負荷を最低限に抑える「ゼロキロメートルハウス」を建造するのが次の研究目標だ。これにはやや長い時間がかかるという。

これだけの大きさの3Dプリンターだと、実物の建物も問題なく作れそうだ。しかし、まだ実際に実物の建物を建設した実績はないという。

1軒の住宅を「プリント」するのにかかる時間は材料によって異なる。早く固まるように配合されたセメント材料を使った場合は高さ数メートルの壁をわずか数時間で建設できる。

こうした材料を使えば、すぐにも住宅の建設は可能だが、同社には興味がない。というのも、同社がビッグ・デルタを開発した目的は、セメントなどの材料が入手できない地域で住宅を建設するためだからだ。

ビッグ・デルタで造形しているところ(写真:WASP)

様々な現地発生材に対応した造形ヘッド

ビッグ・デルタの造形ヘッドに装備されたノズルは、液状で重い様々な材料を押し出せる構造になっている。また、住宅を建設する場所で得られる材料に水や土、植物繊維などを混ぜて使うこともできる。

一方、粘土や土など現地産の材料を使った場合は、造形時に崩れるのを防ぐため、事前に乾燥させたりする必要があるため、より長い時間がかかる。

セメントなどを加えず、自然材料だけで造形する場合には、材料を乾燥させる時間が天候によっても大きく左右されることになる。例えば、乾燥した気候だと、土は非常に早く乾燥する。

そのため、住宅1棟を1日で造形できる場合もあるし、1週間かかる場合もある。現地の自然条件次第なのだ。

コンクリートバケットを思わせる造形ヘッド(写真:WASP)

粘土でも数階建てや数百年使える建物は作れる

土だけで造った家は本当に強いのかという疑問もある。これに対し、同社は数階建ての建物でも、粘土だけで作れると断言している。材料に添加物を加えて造形する技術により、粘土だけで作った場合より高強度で長持ちするようになるという。そして一般のセメントで作った建物と同様の快適さがある。ちなみに、新婚カップルは緑または赤の粘土で作られた住宅を結婚祝いとして選べるとのことだ。

3Dプリンターで作ったものではないが、こうした建物は多くあるという。例えば、ユネスコの世界遺産に登録されているアイット・ベン・ハドゥの街は、全体がモロッコ内陸の泥を作って作られている。WASP社によると、現地のガイドは、粘土で作られた建物には、ほとんど維持管理が必要ないと説明したという。

また、粘土で作った住宅は暖かい気候の地方だけで可能なのではないかという疑問もある。しかし、冬場の最低気温が氷点下になることもある北イタリアのアレッサンドリア地方では、数百年前に粘土だけで建てられた住宅があり、現在も住める状態だ。

現地発生材による建設に世界が注目

高さ12mのビッグ・デルタは市販もしている。同社では販売して得た利益を人間や地球のための技術開発に必要な研究資金として使うという。価格は個別に交渉するとしている。

ビッグ・デルタの次の開発目標は、持続可能性があり、地球環境に適合し、誰もが買いやすい「ゼロキロメートルハウス」を建設するのに必要な研究を行うことだ。さらに次の目標としては自らを3Dプリンターで作り出す自給自足の街を作ることだ。その先には「地球を救う」という究極の目標がある。同社には世界中の多くの地域から、問い合わせがこたえきれないほど来ているという。

昨年9月に一般公開されたビッグ・デルタ(写真:WASP)

WASP社は州や地方自治体、NGO(非政府組織)などがこの3Dプリンターを導入し、地域の福祉事業と連携して住宅の建設を行っていくことを予想している。ビッグ・デルタを現実の条件下で住宅造りを行うための材料や使用方法はまだ見つかっていないが、住宅部品メーカーや修繕会社、公共ベンチャーなどがこうした問題解決に関心を持ってくれるだろうと楽観している。

今後15年間に毎日10万軒以上の住宅ニーズが

3Dプリンターで作った住宅に対するニーズはどれだけあるのだろうか。例えば、年間3000ドル以下で暮らす40億人以上の人たちがいる。このニーズ満たすためには、国連は今後15年間以上にわたり、平均して毎日10万軒以上の住宅を建てる必要があるとしている。

この40億人以上の人たちの多くは年収の10%以上は住宅に使えない。低価格で一定の品質を満たした住宅に対するニーズは、今後、急激に上がっていくと予想されている。

さらに増加する世界人口によって、気象条件が厳しい場所や社会経済が緊張した場所においても、住宅に対するニーズは増え続けると予想されている。

WASP社はバランスを欠いた地球上の開発行為によってこうした住宅ニーズを満たすのは非現実的と感じている。それよりも、社会全体の特性を考慮して、より質素で柔軟な計画を行う方が現実的と見ている。3Dプリンター技術は、人間の主要なニーズを持続可能な開発モデルの中で満たせるようにできる。そんな期待ができるとしている。

現地の材料を使った持続可能な住宅建設を目指すビッグ・デルタ(写真:WASP)

物資があふれた日本で暮らしていると、災害時の仮設住宅など緊急時でもプレハブ住宅を建てるのが当たり前に感じてしまう。海外の住宅不足もプレハブ化で解決した方が効率的ではないかという考え方もあるだろう。

しかし、世界には生産や物流のインフラがなく、住宅に使う鋼材やセメントなどの素材でさえも入手が難しい地域が多くある。

その点、3Dプリンターは様々な現地発生材を臨機応変に使い、効率的に住宅建設を行うことができる。世界が今後、直面する住宅不足という問題を解決する有効な手段になりそうだ。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。