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ドイツの太陽光発電、「失敗」から日本が学べること

投稿日: 2013年7月20日 | 投稿者: ★ちょろQコレクション★

昨日の言論TVで、ドイツの太陽光発電は失敗ということでした。

どういうことでしょうか?こちらに記事が出ていたので転載させていただきます。

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ドイツは膨大な太陽電池を導入した結果、固定価格買い取り制度(FIT)が維持できなくなり、崩壊寸前――このような意見を耳にしたことはないだろうか。このような見方は正しいのか、FIT導入目前の日本が学べることは何か、解説する。

[畑陽一郎,EE Times Japan]

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普及著しいドイツ

 これから太陽光発電の大量普及を図る日本が研究すべきなのはドイツだ。ドイツの事例から学べることは多い。

 ドイツ国内では、太陽光発電の買い取り価格を引き下げる議論が進むなど、太陽光発電に対して距離を置き始めているように見える。しかし、ドイツが失敗したという見方は表面的だ。20年にも及ぶFIT(固定価格買取制度)の運用の結果、既にドイツの太陽光発電は莫大な電力を生み出すに至っている。太陽光発電を諦めたのではなく、わざわざFITを使って強く導入を後押ししなくてもよい段階に至ったと考えるべきである。

ドイツから学べることは他にもある

  • 太陽光の買い取り価格、42円/kWhは妥当なのか(記事
  • 太陽光発電「システム」の価格動向と将来予測を知りたい(記事
  • 太陽光の発電コストが火力発電並になるのはいつなのか(記事
  • 原子力発電の方が安価なのでは(記事

 ドイツが失敗したのか、それとも成功を収めたのか、太陽光発電の現状から確認してみよう。太陽光発電の普及状況は国ごとに異なっており、地理的にもかなり偏っている。世界市場に導入された太陽電池のうち、欧州が4分の3を占めている。これは2011年までの累計値だ。欧州のうち約半数をドイツが占めている(図1)。

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図1 住民1人当たりの太陽光発電の導入量 ドイツ南部のバイエルン州(人口1200万人、州都ミュンヘン)では1人当たりの導入量が450Wを超えている(紫色)。2011年時点のドイツ国民1人当たりの導入量は302.8Wであり、国民1人当たりでは日本の10倍以上に相当する。出典:EPIA

巨大な電力源に成長

 大量に設置された太陽光発電システムは、順調に稼働しているという。ドイツは日本と比べて平均日射量が2割減(8割程度)にすぎず、必ずしも太陽光発電に適した立地ではない。それにもかかわらず、2012年5月25日には、ドイツ全国の太陽光発電システムの最大出力が一時2200万kW(22GW)に達した。再生可能エネルギーに関する調査団体であるドイツIWR(Internationales Wirtschaftsforum Regenerative Energien)の発表(ドイツ語)によれば、2200万kWに達したのは25日の正午であり、晴天に恵まれたためだとした。IWRによれば、出力量2000万kWに到達した国は、ドイツが初であり、この出力量は、原子炉20基分に相当するという。

 太陽光発電は日中、それも晴天時にしか発電できないという強い批判がある。既存の電力源を代替できず、不安定で頼りにならないという批判だ。この「課題」についてドイツはどのように対応しているのだろうか。

 太陽光発電の持ち味を生かすように運用しているというのが答えだ。太陽光発電は、一般に最も電力需要が高くなる日中、それも正午前後に最大出力に達する。従って、電力構成のうち、ベース供給力ではなく、ミドル供給力やピーク供給力を賄うのに適した電力源だ(図2)。image

 

図2 日本国内の電力需要の変化 ある1日の電力需要の変化を表した模式図。常に一定の出力を保つベース供給力と、需要に合わせて出力を調整するミドル供給力、ピーク供給力を組み合わせて需要に対応していることが分かる。出典:電気事業連合会

 ドイツはどのようにピーク需要を賄っているのだろうか。

ピーク需要を賄う

IWRは、太陽光発電のメリットとして、kWh当たりの発電コストが高いガスタービン発電を稼働させなくてもピーク需要を賄えることを挙げている。

 ドイツの太陽光発電は日中のピーク電力需要を賄う役割を十分に果たす規模に成長しているのだろうか。5月25日に限らず長期間にわたって検証した報告もある。ドイツの研究機関であるFraunhofer研究所の太陽光関連の部門Fraunhofer-Institut für Solare Energiesysteme(Fraunhofer ISE)は、2012年5月28日、ドイツの太陽光発電と風力発電の実績についての情報を公開した(図3*1)

*1) 2012年の太陽光発電と風力発電(Stromproduktion aus Solar- und Windenergie im Jahr 2012、ドイツ語PDFimage

 

図3 ドイツにおける発電量の実績 2012年5月21~27日の発電量の実績値を示した。縦軸は出力(10.000は10GWを表す)。太陽光発電(黄色)、風力発電(黄緑色)、その他(灰色)で色分けした。太陽光発電が電力需要の変動部分(ミドル供給力とピーク供給力)をうまく補っていることが分かる。なお、この1週間、太陽光発電の最大出力は22.4GW(発電量1.1TWh)、風力発電は9.1GW(0.65TWh)、その他は47GW(6.0TWh)である。出典:Fraunhofer ISE

 ドイツでは、電力需要のピークを賄うために、太陽光発電と風力発電を組み合わせていることが分かる。原子力や石炭火力などはほぼ一定の出力で動かしている。同研究所が公開している過去1年間のデータを見ると、冬季は太陽光発電の出力が落ちる代わりに、風力発電が活躍し、夏季には逆の傾向があることも分かる。電力源を組み合わせて運用する手法は、再生可能エネルギーにおいても有効だ。

ドイツは2011年以降どうなる

 ドイツの勢いは今後どれほど続くのだろうか。

 200社以上の関連各社が加盟する太陽光発電システムに関する世界最大の業界団体European Photovoltaic Industry Association(EPIA)は、2012年5月に「Global Market Outlook for Photovoltaics until 2016」と題した太陽光発電に関するリポートを公開している*2)。同リポートは欧州を中心に太陽光発電の現状と2016年までの将来予測をまとめたものだ。

*2) EPIAの出版物ページからPDF形式の76ページのリポートをダウンロードできる。

ドイツ政府の計画通り進む

 EPIAのリポートによれば、ドイツの太陽光発電の導入はドイツ政府の計画通りに進みそうだ(図4)。特段の政策支援がない場合の中位予測でも、2015年までに達成すべき政策目標(累積導入量)を超えるからだ。image

 

図4 ドイツの太陽光発電の導入量予測 棒グラフは新規導入量、折れ線グラフは累積導入量。灰色はこれまでの確定値。黄色はEPIAの中位予測、赤色は主導的な政策が実行された場合の予測、青丸はドイツ政府の目標である。出典:EPIA

 EPIAの予想で注意が必要なのは、ドイツの導入量が既にピークを過ぎているという点だ。政策支援があった場合でも、過去最高となる2011年の新規導入量7.5GW(7485MW)を超えるのは2012年単年(8GW)だけだ。これはドイツが太陽電池の輸出先としては魅力的ではなくなるということを意味する。日本の国内企業の欧州に対する輸出額が減り続けているという統計は、ドイツ市場の将来予測とも合致する(関連記事:「明暗分かれる太陽光発電――住宅用は1.4倍に成長、輸出は悪化が続く」、記事本文*3)

*3) ドイツだけでなく、欧州市場全体の新規導入量をEPIAが予測した数値も似たような傾向を示している。中位予測では2011年の21.9GWに対して、2012年は9.4GWに落ち込み、2016年に至っても10.3GWにすぎない。政策支援があった場合でも、2012年に21.6GW、2013年に16.6GWと落ち込む。その後回復を見せるが、2011年の水準を超えるのはようやく2016年(24.8GW)だ。

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日本がドイツから学べることは何か

 EPIAの分析によれば、2011年にドイツ市場が過去最大の導入量に至った原因は2つあるという。1つは太陽光発電関連、特に太陽電池モジュールの価格が急落したことだ。中国企業の大増産などが要因となって需給ギャップが発生したことによる。

 もう1つは、2011年7月にドイツで実施が予測されていたFITの買い取り価格値下げが延期されたことだ。2つの要因が重なったことで、2011年第4四半期だけで3GWもの新規導入に至った。これは2011年度の日本国内市場向け出荷量と国内企業の輸出量を足し合わせた量をも上回る導入量である。

 ドイツはFIT改定に関して豊富な経験があるものの、いったん市場が過熱したときの制御は一刻を争うことが分かる。これは日本が学ぶべき点だ。FITの買い取り価格が導入コストから計算した額よりもあまりにも高いと、容易に「バブル」が起こる。

バブルで何がいけないのか

 2012年7月から日本国内で始まるFITの買い取り価格(42円/kWh)が高すぎるのではないか、という批判が挙がっている。FITの原資は電気料金だ。太陽光発電システムを導入していない個人や企業にとって、買い取り価格がなるべく低い方が電気料金を抑制できる。

 だが、これ以外の批判もある。高すぎる買い取り価格は電気料金以外にもさまざまな問題を引き起こすからだ。FITの狙いは太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーの普及促進にある。量的な拡大はもちろん、技術の進歩を支えるという意味もある。買い取り価格が高すぎれば、技術的に未熟な、コスト高な発電システムが市場で大量に生き残ってしまう。これが問題だ。既存のエネルギー源に匹敵する電力源を作り出すことがFITの究極の目的であり、これに反してしまう。このようなシステムを提供する企業が、バブル終了後にどうなるのかは想像に難くない。

設置コストの内訳を調査すべき

 太陽光発電システムを導入する場合、太陽電池などの製造コストは全導入コストの半分を占めるにすぎない。残りの半分は設置コストだ(関連記事:「太陽電池の製造コストはどうなる――プラスチック製には勝機があるのか」、記事本文)。つまり太陽電池モジュールというハードウェアだけを見ていてはいけない。

 産業技術総合研究所太陽光発電工学研究センター評価・システムチーム研究員の櫻井啓一郎氏によれば、高すぎる買い取り価格はさらに別の問題を引き起こすという。

 「太陽電池モジュール自体を海外からたとえ全量輸入したとしても、国内ではサービス部分で勝負できる。このような最悪ケースの場合でも、導入コストの半分以上は国内経済に寄与すると考えるべきだ。従ってこの部分を育てるFITでなければならない。しかし、人材や産業の育成にはある程度の時間がかかるため、高すぎる買い取り価格によって生まれたバブルには追い付けない」(櫻井氏)。

 このような問題が起こっていないかどうか検証するためには、FITが人材や産業の育成に役立っているかを監視する必要がある。ここに課題がある。「設置コストについて、国内では公的な統計が整備されていないため、現状の把握はもちろん、過去からの推移、将来の予測も難しい状態にある」(櫻井氏)。FIT実施以外にも進めなければならない取り組みは多い。