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マツダ ロードスター25周年! スポーツカーの歴史を激変させた名車

投稿日: 2014年6月9日 | 投稿者: ★ちょろQコレクション★

マツダ・ロードスターが誕生25周年を迎えた。これを記念した特別仕様車(ロードスター25周年記念車)が25台限定で国内発売されることになり、5月27日から始まった商談予約受付は早くも完了だという。環境志向の高まりでスポーツカーが次々と姿を消していく中、ロードスターの健在ぶりは日本の自動車業界全体にとって喜ぶべき快挙だろう。

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ロードスター25周年記念車。国内では限定25台が発売される

ロードスターが誕生した25年前、業界筋の評価は低かったが…

ロードスターの誕生は1989年。当時、オープン2シーターのスポーツカーはほぼ絶滅状態にあり、世界中の自動車メーカーが見限ったカテゴリーと言ってよかった。その新型車をわざわざ作って発売しても売れるわけがない……と冷ややかに見られていたが、発売してみたら大人気。事前の評価を覆したマツダの大逆転劇として、この逸話は有名だ。

ただし、当時、自動車雑誌の編集部に在籍し、周囲が車好きだらけだった筆者の実感と比べると、この逸話はちょっと違和感がある。当時はバブル真っ只中でもあり、車好きはとにかく「かっこよくて楽しいクルマ」を求めていた。お金のある人はベンツだフェラーリだと輸入車に走ったが、お金のない若年層は安くて、しかもかっこいい「デートグルマ」を渇望していた。そう、当時の20代男性にとって、クルマはデートをするための道具であり、実用性や経済性などどうでもよかったのだ。だからロードスターの発売を知ったとき、多くの車好きはむしろ「売れるに決まっている」と思ったものだ。image

25周年記念車は、「25年分の”Fun”を集約させた特別仕様車」(マツダ)だという

ちなみに、当時のマツダは販売チャンネルをトヨタ並みの5つに増やし、それに見合う車種をいっせいに発売するという、いまにして思えば途方もない前代未聞のミッションを遂行中だった。新設された販売チャンネル「ユーノス店」の販売モデルだったロードスターは、5チャンネル戦略の尖兵でもあった。

「ロードスターは売れない」と業界筋が決めつけたのは、5チャンネル戦略が明らかに無謀であり、そんな無謀な計画から生み出されたモデルもまた売れないだろうという、クルマの魅力そのものとは別のところで判断された面が多分にある。この予測は結果的に外れたものの、正しい分析ではあった。

この時期に発売されたマツダ車といえば、MS-9、MS-8、MS-6、ユーノス500、ユーノス800、ユーノスプレッソ、クレフ、クロノス、センティア、AZ-1、レビュー(改めて列記すると、あまりの数多さに驚く)などがあるが、この中には「名車」と評されるモデルも少なくない。とくにデザイン面ではどのモデルもきわめてレベルが高く、ユーノス500などはジョルジェット・ジウジアーロ氏が絶賛したとも伝えられている。

しかし、どんなにクルマが良くても、販売体制が弱いと売れないのが日本のマーケット。上記モデルは5チャンネル戦略の破綻とともに、そのほとんどが短命に終わった。

それを思うと、消滅した販売チャンネルであるユーノス店の専売モデルだったロードスターが生き残ったことは奇跡だ。車種を統廃合するなら真っ先に生け贄にされるのはスポーツカーと相場が決まっているのだが、マツダの場合はロードスターが生き残り、RX-7も長期にわたって生産された一方、本来ならメーカーの屋台骨となるべき4ドアセダンが総崩れとなった。皮肉といえば皮肉だし、マツダらしいといえばマツダらしい。

自動車の歴史において、「名車」はあまたあるが、他の名車とマツダ ロードスターが決定的に異なるのはその影響力だ。ロードスターが成功すると、世界中のメーカーから次々にオープン2シーターが発売された。

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今年で誕生25周年を迎えたロードスター(写真は2013年、東京モーターショーで撮影)

たとえば、海外勢ではBMWのZ3とZ4をはじめ、メルセデス・ベンツのSLK、ポルシェのボクスターとMG-F、フィアットのバルケッタなど。やや毛色が異なるが、ロータス エリーゼも挙げておきたい。国産ではホンダ S2000、トヨタ MR-S、ダイハツ コペンがあり、4シーターまで枠を広げればトヨタ ソアラ(レクサスSC)や日産フェアレディZロードスターもある。

これらのモデルのいくつか、もしかしたらすべては、ロードスターの成功がなかったら存在していないかもしれない。もしロードスターが発売されていないパラレルワールドが存在したなら、そこはクルマ好きにとって非常に寂しい世界になっていることだろう。

このように、ロードスターが再構築したオープン2シーターというカテゴリーだが、いま現在はもうひとつ盛り上がりに欠けていて、残念なことだと思う。なにしろS2000もMR-Sもコペン(先代)もかなり前にディスコンになっていて、ロードスターのライバルと呼べるモデルは現時点の国産車にひとつもない。海外勢も人気モデルとして定着したのは大排気量のプレミアムカーばかりで、ライトウェイトといえるモデルは生き残っていない。

ロードスターの出来の良さが、他のオープン2シーターを駆逐してしまった

ボクスターやSLKのような高級モデルもいいが、若い人が現実的に考えられる、経済的にもライトウェイトなオープン2シーターがロードスターのみというのは寂しいことだ。なぜこんなことになったのか? ひとつには、やはりオープン2シーターの市場規模が限られていて、多くのモデルが共存することができないから、という理由もあるだろう。

しかし、これがライバル不在の理由のすべてであるとすれば、ロードスターがギネスブックに載るほど売れに売れたことの説明がつかない。他に考えられる理由は何かといえば、それはやはり、ロードスターの出来があまりに良すぎたからではないだろうか?

たとえば車重。初代の最も軽いモデルで940kg、厳しい衝突安全基準が課せられている現行モデルでも1,100kg前後だが、高価なプレミアムモデルのようにアルミやCFRPを使うことなく、この軽さを実現できるのはすごい。軽さにこだわっていると豪語するトヨタ86でさえ1,220kgあるし、ロードスター最大のライバルだったS2000は1,250kg前後だった。

もう1台のライバルだったMR-Sは、車格が小さかったこともあって1,000kg前後と軽量だったが、このモデルはラゲッジスペースがきわめて小さいなど、軽量化のために大きな代償を払っていた。だから成功しなかったというわけではないだろうが、スポーツカーにとっても、積載性や使いやすさといった実用性は意外と重要になってくるわけで、それをすっぱり割りきったモデルときっちり両立させているモデルがあったとすれば、(スーパーカーは別として)売れるのは結局後者なのだ。

その点で、ロードスターは十分な広さのトランクがあり、しかもオープンにしてもトランク容量が変化しない。現行モデルはリトラクタブルハードトップもあるが、このモデルでさえオープン時にトランク容量が変化しないのは特筆に値する。これなら、夫婦やカップルで2~3泊の小旅行に出かけ、かつその途中でいつでも気ままにオープンエアの爽快感を楽しむことができる。オープン2シーターを買ったら誰もが一度はやってみたいシチュエーションだが、これができるモデルは世界中を見渡しても少ない。

こうして振り返ってみると、ロードスターは自らの大ヒットによって多くのライバルを生み出し、そのライバルをことごとく駆逐してしまったといえる。とはいえ、直接競い合えるライバルがいないのは健全な状態ではない。

ダイハツ コペンやホンダS660が間もなく登場することは、たとえクラスが違っていても、ロードスターにとって喜ぶべきことだろう。これらのモデルが売れればオープンカーのマーケット全体の底上げになるだろうし、ライバルに負けじと改良することで、ロードスターもさらに進化するはずだ。

そのロードスターも、現行モデルの登場からすでに9年が経過し、次期モデルの具体的な情報も出てきている。その情報が正しければ、かなりドラスティックな変身を遂げるようだ。このモデルをベースにアルファ ロメオ・スパイダーも開発され、広島で生産されるという。もしタイムマシンがあれば、25年前に行ってこの話を吹聴して回りたいものだ。

そんなことをしたら歴史が変わってしまう? いや、その心配は不要だろう。誰もがまったく信用しないだろうから。

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